Archelier 鉄骨機能の使い方ガイド、How to use 編の第2弾です。前回解説した BeamJoint(梁継手)に続き、今回は柱と梁が交差する「柱梁接合部」を表現する GussetPlate の使い方を解説します。Y字形や十字形の仕口、両面挟み込みといった、より複雑なディテール表現の世界へご案内します。一見すると複雑に見えるガセットプレート周りのモデリングも、GussetPlate が備える5つの主要なパラメータを理解すれば、驚くほど直感的に、そして正確に作成できます。

GussetPlate とは — 大梁と小梁の接合部を3Dで表現する

GussetPlate は、鉄骨構造における大梁と小梁の接合部(仕口)に配置されるガセットプレートと高力ボルトを、パラメトリックに自動生成するアドオンです。前回の BeamJoint が梁同士を直線的に繋ぐ「継手」を対象としていたのに対し、GussetPlate は部材が交差する、より複雑な「仕口」のディテール表現を得意とします。

このツールを使えば、プレート本体はもちろん、高力ボルト一式(ナット、ワッシャー含む)、そして必要に応じて補強用のスチフナーまで、関連する全部材をワンセットで3Dモデル化できます。手作業では手間のかかる詳細なディテールも、GussetPlate を使えば数クリックで完了します。

配置の基本フロー

GussetPlate の操作は、Archelier シリーズの思想を受け継ぎ、非常にシンプルです。基本的な配置フローは、わずか3ステップで完了します。

  1. 親となる部材(大梁)と、取り付く子部材(小梁)を ArchiCAD 上で選択します。
  2. メニューから GussetPlate を起動し、設定ダイアログを開きます。
  3. 必要なパラメータを入力し「OK」をクリックすると、選択した部材間にガセットプレートが自動で配置されます。

部材の断面情報や角度は自動で取得されるため、ユーザーは接合部の仕様を決めることに集中できます。

GussetPlate で押さえる5つのパラメータ

GussetPlate の設定ダイアログは、数多くの項目を備えていますが、基本となるのは以下の5つのパラメータです。これらを理解することで、ほとんどの接合部ディテールに対応できます。

1. 接合形式 — 片面 / 両面挟み込み

まず、接合の形式を決定します。GussetPlate では、代表的な2つの形式から選択できます。

  • 片面接合:大梁のウェブにガセットプレートを直接溶接し、そのプレートに小梁のウェブをボルトで接合する形式です。最も一般的な仕口で、多くの場面で利用されます。
  • 両面挟み込み:2枚のガセットプレートで小梁のウェブを両側から挟み込み、ボルトを貫通させて固定する形式です。より高い剛性が求められる十字形の仕口などで採用されます。なお、両面挟み込みは現バージョンでは試験的な実装となっており、対応する小梁サイズは H-300×150 のみとなります。今後のアップデートで対応サイズを拡張していく予定です。

どちらの形式を選択するかによって、後述するボルトの配置基準なども自動で最適化されます。

2. プレート形状 — 幅・高さ・板厚・原点位置

次に、ガセットプレートそのものの形状を定義します。プレートの幅、高さ、板厚といった基本的な寸法を指定します。

ここで重要なのが「原点位置」の考え方です。プレートをどの点を基準に配置するかを、幅方向(大梁側 / 中央 / 反大梁側)と高さ方向(上端 / 中央 / 下端)の組み合わせ、全9パターンから選択できます。これにより、例えば「プレートの上端を梁の天端に合わせる」「プレートの端部を大梁のフランジ面に合わせる」といった、設計意図に応じた精密な位置決めが可能です。なお、角部にR(丸み)を付ける設定については、今後のアップデートで対応予定です。

3. ボルトサイズと配列

接合の要となる高力ボルトの仕様を設定します。まず、ボルト径を M16、M20、M22 の中から選択します。

続いて、ボルトの配列を「行数」と「列数」で指定します。さらに、ボルト間の距離を定義するピッチ(鉛直方向の間隔)とゲージ(水平方向の間隔)、そしてプレートの縁からボルト中心までの距離である端あき寸法を入力します。これらのパラメータにより、構造計算に基づいた正確なボルト配置を実現します。

片面接合の場合は大梁側の端を基準に、両面挟み込みの場合はプレート幅の中央を基準にボルトが自動配置されるなど、接合形式に応じたインテリジェントな挙動も特徴です。

4. 勾配への対応

GussetPlate が特に威力を発揮するのが、勾配のついた部材が絡む接合部です。小梁や大梁に勾配がある場合でも、プレートの形状や姿勢を柔軟に制御できます。

  • 小梁に勾配がある場合:プレートの上端が、小梁の勾配に合わせて自動的に斜めにカットされます。
  • 大梁に勾配がある場合:プレート全体の姿勢を「常に垂直を保つ」か「大梁のウェブ面に対して直角にする」かを選択できます。

これらの機能を組み合わせることで、切妻屋根の登り梁や母屋、勾配屋根とパラペットが取り付く部分、あるいは複雑なトラスフレームの節点など、これまで3Dモデリングが困難だった箇所も、正確かつスピーディに表現できます。

5. L形(スチフナー付き)形状

GussetPlate は、標準的な矩形のプレートだけでなく、補強リブ(スチフナー)を持つL形のプレートも作成できます。

スチフナーの幅をプレート幅よりも小さな値で指定するだけで、プレートの形状が自動的にL形に変化します。これは、ボルトが配置されるエリアと、下方へ伸びる縦リブで構成され、ハンチのように応力が集中する箇所の補強ディテールとして有効です。矩形かL形かを、パラメータ一つで瞬時に切り替えられる柔軟性を備えています。

BeamJoint との連携・統一された設計思想

GussetPlate は、前回ご紹介した BeamJoint と共通の設計思想で作られています。部材を選択してからツールを起動すれば、部材情報を自動で読み取る「Auto モード」になる点や、何も選択せずに起動すると標準ディテールを作成できる「Manual モード」に切り替わる点も同じです。

また、パラメータ同士が常に関連し合って再計算される点も共通しています。例えば、ボルトの列数を増やせばプレートの幅が自動で拡大し、板厚を変更すればプレートの重量が再計算されます。設計者は細かな整合性を気にすることなく、本来の設計業務に没頭できます。

集計機能との連動

Archelier で作成されたオブジェクトは、単なる3Dの塊ではありません。そのすべてが、BIMモデルとして必要な情報を持っています。

GussetPlate で配置したプレートやボルトも例外ではなく、ArchiCAD の一覧表機能と完全に連動します。配置済みのモデルから、プレートの枚数、寸法、鋼材重量、そして高力ボルトの径ごとの本数を瞬時に集計できます。設計変更でプレートのサイズやボルトの本数を変更すれば、その内容はリアルタイムで集計表に反映されます。「描いたものが、そのまま数えられる」という BIM 本来の価値が、ここでも実現します。

次回予告 — Brace(ブレース)編

今回は、柱梁接合部を表現する GussetPlate の使い方を解説しました。シリーズ第3弾では、耐震要素として重要な「ブレース」のモデリングに焦点を当てます。ターンバックル付きの丸鋼ブレースや山形鋼ブレース、そしてそれらが取り付くガセットプレートまで、さらに詳細な鉄骨ディテールの世界をご案内する予定です。ご期待ください。

Archelier の鉄骨機能の詳細は 機能紹介ページ をご覧ください。